多くのパン好きに愛され続けてきた「キリーズフレッシュ」が、2023年6月30日、東京都内2店舗の営業を終了しました。
成城と広尾で展開していた同店は、ハード系パンとラスクの名店として知られ、連日行列ができるほどの人気を誇っていました。なぜ、これほどまでに愛されていた店舗が閉店に追い込まれたのでしょうか。本記事では、様々な角度から閉店の背景を分析し、その真相に迫ります。
キリーズフレッシュとは?老舗パン屋の足跡を振り返る
キリーズフレッシュは、2005年の創業以来、本格的なハード系パンの提供にこだわり続けてきました。特に、フランスパンをベースにしたラスクは、芸能人も通う人気商品として知られていました。
店舗情報(閉店前)
成城店
- 所在地:東京都世田谷区成城6-5-34
- アクセス:小田急線成城学園前駅から徒歩3分
- 営業時間:10:00~19:00(売り切れ次第終了)
広尾店
- 所在地:東京都港区広尾5-16-2
- アクセス:東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩1分
- 営業時間:10:00~19:00(売り切れ次第終了)
看板商品と評価
- フランスパン:フランス産の小麦粉を使用し、本場の味わいを追求
- ラスク:フランスパンをベースに、独自の製法で仕上げた逸品
- クロワッサン:発酵バターを贅沢に使用した折り込みパン
閉店に至った3つの主要因
1. 原材料費の高騰による収益性の悪化
2022年以降、パン製造に欠かせない原材料の価格が急上昇しました。
- 小麦粉:前年比30%増
- バター:前年比25%増
- 砂糖:前年比15%増
特に、フランス産小麦粉を使用していたキリーズフレッシュにとって、円安による仕入れコストの上昇は大きな打撃となりました。
2. エネルギーコストの上昇
パン製造には、大量の電力とガスを使用します。エネルギー価格の高騰は、以下のような影響をもたらしました。
- 電気代:前年比40%増
- ガス代:前年比35%増
24時間稼働のオーブンを必要とする本格的なベーカリーにとって、この負担は極めて大きいものでした。
3. 価格転嫁による客離れ
原材料費とエネルギーコストの上昇を受け、2023年初頭に実施された価格改定。しかし、この決断が客離れを加速させる結果となりました。
値上げ前後の主力商品価格の比較:
- フランスパン:280円→350円
- クロワッサン:220円→280円
- ラスク(1袋):580円→680円
業界全体の厳しい状況
キリーズフレッシュの閉店は、パン業界全体が直面している構造的な問題を反映しています。
パン業界の現状
東京商工リサーチの調査によると:
- 2023年のパン屋倒産件数:前年比30%増
- 廃業を検討している事業者:全体の15%
- 価格改定実施店舗:全体の80%以上
存続するパン屋の対策例
- 商品構成の見直し
- 営業時間の短縮
- 製造工程の効率化
- EC販売の強化
キリーズフレッシュから学ぶ教訓
今後のパン屋経営に必要な要素
- コスト管理の徹底
- 原材料の仕入れ先の多様化
- エネルギー使用の効率化
- 製造プロセスの見直し
- 収益構造の改善
- 商品ラインナップの最適化
- 販売チャネルの多角化
- 固定費の削減
- 顧客との関係強化
- 価格改定時のコミュニケーション強化
- ロイヤルカスタマー向けの特典制度
- SNSを活用した双方向のやり取り
まとめ:キリーズフレッシュ閉店から見える日本のパン業界の課題
キリーズフレッシュの閉店は、単なる一店舗の経営破綻ではなく、日本のパン業界全体が直面している構造的な問題を浮き彫りにしています。高品質な製品と確かな技術があっても、急激な経営環境の変化に対応できなければ、存続は困難となる時代に入っているのです。
今後、同様の事態を防ぐためには、以下の点が重要となります:
- 経営の多角化とリスク分散
- デジタル化による効率向上
- 顧客との強固な関係構築
追記:キリーズフレッシュ跡地情報
両店舗の跡地利用状況について:
- 成城店:2024年1月現在、新たなテナント募集中
- 広尾店:2023年12月より、新業態のカフェがオープン
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